ビジュアル・ニュース解説

英国、EUを離脱へ~背景と今後の影響は?

2016.7.18 掲載
2016年6月、英国で行われた欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票で、支持が全体の過半数を占めて離脱が決まりました。EU加盟国の離脱は初めてで、統合と拡大を進めてきた欧州は大きな試練に直面しています。英国とEUの今後の関係は不透明で、国際金融や世界経済、企業の欧州での事業展開などに悪影響が及ぶ恐れがあります。今回は欧州統合のこれまでの歩みや、国民投票が実施された経緯、英のEU離脱による日本への影響などについて解説します。

3.統合の負の側面が顕在化

 EUは加盟国間の貿易に課す関税を撤廃し、人・モノ・サービス・資本の移動を自由化しています。ユーロ圏内では貿易や国境を越えた金融取引をする際、為替変動で損失を被る恐れ(為替リスク)もありません。そのため、域内の企業は国境を意識せずに域内全体で自由に事業を展開できます。例えば、英国の小売りチェーンがドイツの銀行から資金を借り、フランスに店舗を出店することも容易です。欧州統合は域内の貿易や企業間競争を活発にし、経済成長を促すと期待され、欧州経済はEU発足後堅調に推移してきました。
 しかし近年は、欧州統合による域内各国の経済関係の緊密化に伴う負の側面が目立ちます。2010年にギリシャの債務問題が欧州全体の経済危機につながり、現在もくすぶり続けています。中東やアフリカから流入した多くの難民への対応でも、各国の足並みがそろいません。移民増加やギリシャなど財政が悪化した国を救済するための負担への反発から、先進国を中心にEUに対する懐疑論が強まっていました。
2016年7月18日掲載