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「パナマ文書」世界を揺るがす~タックスヘイブンについて知る

2016.6.20 掲載
世界の企業や富裕層による課税逃れの実態を明らかにした「パナマ文書」報道をきっかけに、タックスヘイブン(租税回避地)に対する関心が高まっています。企業や一部の富裕層だけが脱税や行き過ぎた節税ができるうえ、それによって納税額が減って各国の財政悪化の一因となっていることに批判が強まり、タックスヘイブンへの監視強化の機運が高まっています。今回はタックスヘイブンとは何かや、その問題点、課税逃れを防ぐための国際的な取り組みについて解説します。

4.タックスヘイブンを利用した課税逃れ監視体制強化へ

4.タックスヘイブンを利用した課税逃れ監視体制強化へ
 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は16年4月、タックスヘイブンへの会社設立手続きなどを手がけるパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した内部文書についての報道を始めました。この「パナマ文書」にはタックスヘイブンに設立された約21万社のペーパーカンパニーに関する情報が記されており、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領、英国のキャメロン首相ら世界の政治指導者の関係者のほか、俳優のジャッキー・チェン氏やサッカーのメッシ選手ら著名人の名前が挙がっていました。それまで秘密のベールに包まれていた富裕層などによるタックスヘイブンの利用実態の一端が明るみに出たことで、課税逃れに対する批判の声が一気に高まりました。パナマ文書で資産隠し疑惑が指摘されたアイスランドのグンロイグソン首相が辞任に追い込まれるなど、政治問題にも発展しています。約400に上る日本の法人や居住者の名前も挙がっており、国内にも波紋が広がっています。
 パナマ文書問題を受け、米国ではオバマ大統領がペーパーカンパニーの実質的な所有者の報告を義務づける税制改正案を打ち出したほか、渦中の人でもあるキャメロン英首相は課税逃れ対策を進めると表明。5月に開かれた主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では国境を越えた過度の節税の防止策づくりを日米欧が先導することを確認しました。ドイツや英国など欧州5カ国とOECDは各国による課税情報の共有を世界規模に広げるよう共同提案しています。パナマ文書の暴露をきっかけに、タックスヘイブンを利用した脱税や課税逃れに対する国際的な監視体制の強化がさらに進みそうです。
2016年6月20日掲載