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「パナマ文書」世界を揺るがす~タックスヘイブンについて知る

2016.6.20 掲載
世界の企業や富裕層による課税逃れの実態を明らかにした「パナマ文書」報道をきっかけに、タックスヘイブン(租税回避地)に対する関心が高まっています。企業や一部の富裕層だけが脱税や行き過ぎた節税ができるうえ、それによって納税額が減って各国の財政悪化の一因となっていることに批判が強まり、タックスヘイブンへの監視強化の機運が高まっています。今回はタックスヘイブンとは何かや、その問題点、課税逃れを防ぐための国際的な取り組みについて解説します。

1.法人税などの税率が低く、会社の設立が簡単

1.法人税などの税率が低く、会社の設立が簡単
 タックスヘイブンは法人税や所得税の税率をゼロか、極めて低くしている国や地域を指します。中米のパナマやカリブ海地域の英国領ケイマン諸島が有名で、リヒテンシュタインやモナコなどの欧州の小国も該当します。法の規制が緩く、会社を短期間で簡単に設立できるほか、金融機関の口座や設けた会社の情報を厳しく管理して外部に漏らさない秘密主義が徹底されているのが特徴です。
 企業は法人登記はされているものの営業実態がないペーパーカンパニーをタックスヘイブンに置いて利益や資産をそこに移せば、支払う税金の総額を減らせます。富裕層がタックスヘイブンに設立したペーパーカンパニーに資産を移し、海外の資産や企業に投資すれば、節税することもできます。
 タックスヘイブンの側は税率を低く抑える代わりに、会社設立の登記手数料が得られ、世界中の企業や富裕層からお金が集まることで金融業を拡大できます。国の経済を支える基幹産業がなく、外貨を獲得する資源が乏しい小国・地域が、生き残る手段として制度を整えています。
 タックスヘイブンは戦争を背景に発展したといわれます。19世紀後半から20世紀前半にかけ、戦争で国家財政が傷んだフランスなど欧州各国が相次ぎ税率を引き上げた結果、富裕層の課税回避を助けるビジネスが生まれました。20世紀後半以降、新たに開発された金融商品を活用したり、複数のタックスヘイブンに資産を分散したりするなど、課税を逃れようとするお金の流れはより複雑化しています。
2016年6月20日掲載