ビジュアル・ニュース解説

TPPの影響について知る

2015.11.16 掲載
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が2015年10月、大筋合意に達しました。世界最大の自由貿易圏が誕生します。自動車などの工業分野の輸出拡大が期待される半面、安い海外産農産物の輸入拡大によって国内農家が厳しい競争にさらされる恐れもあります。今回はTPPの概要や産業界・消費者への影響、発効までの今後の見通しについて解説します。

1.世界のGDPの約4割を占める多国間EPA

1.世界のGDPの約4割を占める多国間EPA
 特定の国や地域との貿易を活発にするため、関税や輸入数量割り当てなどの貿易制限を相互に削減・撤廃する協定を自由貿易協定(FTA)といいます。モノの貿易だけでなく、投資や労働力の移動、知的財産権の保護などを含む経済活動の拡大に関する協定が経済連携協定(EPA)です。TPPはアジア太平洋地域の12カ国が参加するEPAです。2006年にシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリの4カ国で発効したFTAが前身で、10年に米国、オーストラリア、ペルー、ベトナムを加えた8カ国で交渉を開始。その後、マレーシア、メキシコ、カナダが交渉に参加し、13年7月に日本も交渉に加わりました。
 交渉に参加した12カ国は原則すべての品目の関税撤廃を掲げ、5年半かけて協議してきました。交渉の焦点となったのが経済規模の大きい日本と米国の2国間交渉でした。米国は日本にできるだけ多くの農産品の関税をなくすことを、日本は米国が自動車部品の関税をゼロにすることをそれぞれ求め、交渉は平行線が続いたため、TPPの全体交渉は難航しました。しかし15年6月、米議会で大統領に通商交渉の権限を委ねる大統領貿易促進権限(TPA)法が成立。これにより交渉が大きく進展し、10月に開かれた閣僚会合で、参加12カ国が大筋合意に達しました。発効すれば域内人口が約8億人、世界の国内総生産(GDP)の4割近くを占める自由貿易圏が誕生します。
2015年11月16日掲載