ビジュアル・ニュース解説

格安航空会社の最新事情を知る

2015.9.21 掲載
2012年に就航した国内の格安航空会社(LCC)が新たな局面を迎えています。15年4月に成田空港に専用ターミナルが開業し、LCC普及を促す動きとして注目されています。安さを武器にこれまで飛行機を利用していなかった人たちの需要掘り起こしに成功し、着実に利用者を伸ばしてきました。その一方で、パイロットの不足や効率と安全性の両立など、課題も浮かび上がっています。今回はLCCが登場した背景や、安い運賃を実現する仕組み、国内のLCCの最新動向などについて解説します。

4.2012年に国内でLCCの就航が相次ぐ(2)

4.2012年に国内でLCCの就航が相次ぐ(2)
 LCCが今後、さらに普及するための最大の課題は安全性の確保です。14年12月にエアアジア、15年3月には独ルフトハンザ子会社のジャーマンウイングスと、LCCの旅客機墜落事故が相次ぎ、LCCの安全性に対する関心が改めて高まっています。
 パイロット不足の解消も急務です。14年にピーチ・アビエーションやバニラ・エアなどでパイロット不足による減便が続出しました。LCC各社はこれまで、経営破綻で退職を余儀なくされた日航のパイロットのスカウトや、外国人パイロットの大量採用などで操縦士を確保してきました。しかし、新興国の経済成長などに伴って航空需要が増えたため、世界的にパイロット不足が深刻になっています。パイロットの育成と確保はコスト増につながり、LCCのビジネスモデルを揺るがしかねないだけに、対応に知恵を絞ることが求められます。
 国内LCCはこれまで赤字が続いてきましたが、ピーチ・アビエーションが14年3月期に初めて営業損益が黒字となるなど、路線網の拡大などで各社の収益は上向いています。その一方で、LCC同士の競争も激しくなっています。成田空港を拠点にするジェットスターが14年6月に関空を拠点にしたのに続き、15年3月には関空を拠点とするピーチ・アビエーションが成田に本格進出し、ジェットスターやバニラ・エアと競合する札幌線などの運航を始めました。収益改善のためには限られた市場の奪い合いではなく、市場全体の拡大が欠かせません。航空大手に対抗して今後、さらに利用者を増やし、成長を続けられるのか。LCCは正念場を迎えています。
2015年9月21日掲載