ビジュアル・ニュース解説

社外取締役と企業統治について知る

2015.9.7 掲載
安倍政権は企業の競争力を高めることを狙い、企業統治(コーポレートガバナンス)の強化を打ち出しています。施策の中心は社外取締役の活用で、2015年5月に上場企業に社外取締役の選任を促す改正会社法が施行されたのに続き、6月には会社から独立した立場の社外取締役を2人以上選任するよう求める企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)が適用されました。今回は企業統治の考え方の基本や近年の強化策の内容、導入の背景などについて解説します。

4.上場企業への企業統治指針の適用も始まる(2)

4.上場企業への企業統治指針の適用も始まる(2)
 会社法の改正や企業統治指針の適用で、社外取締役を選任する企業が急速に増えています。15年7月時点で東証1部上場企業の94%に社外取締役がおり、全体に占める比率は14年に比べて20ポイント上昇しました。2人以上の独立社外取締役を選任する企業も48%と26ポイント上昇しています。
 社外取締役に就く人材も多様化しています。弁護士や学者、元官僚だけでなく、元スポーツ選手や文化人など著名人からも起用されています。最近は外国人の社外取締役も目立ちます。
 ただ、企業統治に力を入れる企業が増えても経営のチェック機能が働かなければ意味がありません。15年4月に東芝の不適切な会計処理が明らかになりました。東芝の第三者委員会が7月にまとめた調査報告書は「経営判断として組織的な利益操作があった」と指摘、歴代3社長が辞任する事態となりました。同社は企業統治改革にいち早く取り組んできたとみられていましたが、実際には経営チェック体制が適切に機能していませんでした。不正防止や企業価値の向上という目的のため、いかに実効性のある統治の仕組みをつくり上げるかが企業に問われています。
2015年9月7日掲載