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世界の高速鉄道計画と日本のインフラ輸出について知る

2015.5.18 掲載
 新興国を中心に世界で高速鉄道計画が相次いでいます。日本政府は成長戦略の一環としてインフラの輸出拡大を掲げており、新幹線の開発・運営などで高度な技術を持つ国内鉄道産業のグローバル展開に期待が高まっています。ただ、世界の鉄道市場では欧州メーカーが先行しており、中国や韓国勢など新たなライバルも台頭しています。今回は高速鉄道の歴史や建設受注をめぐる企業動向、インフラ輸出拡大に向けた日本の取り組みなどについて解説します。

2.新幹線の成功から世界中に広がった高速鉄道網

2.新幹線の成功から世界中に広がった高速鉄道網
 高速鉄道に世界共通の明確な基準はありませんが、国際鉄道連合(UIC)は最高時速250キロメートル以上で走行する列車を高速鉄道としています。日本では全国新幹線鉄道整備法により「その主たる区間を列車が200キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道」を新幹線と定義しています。
 世界の高速鉄道の先駆けが日本の新幹線です。東京五輪開催を目前に控えた1964年10月1日、東京-新大阪間を最高時速210キロメートル、最短約3時間(開業当初1年間は約4時間)で結ぶ東海道新幹線が開業しました。それ以前の国内最速の列車は東海道本線の特急「こだま」で、最高時速は110キロメートルでした。当時、鉄道先進国とされた英国、フランス、ドイツなどの列車でさえ最高時速は160キロメートル以下で、最高時速210キロメートルがいかに画期的だったかが分かります。
 新幹線の登場と営業運転の成功は世界の鉄道計画に大きな影響を与えました。1981年にフランスの「TGV」が最高時速260キロメートルで運行を始めたのに続き、イタリアの「ETR」、ドイツの「ICE」、スペインの「AVE」、ベルギーの「タリス」、英国の「ユーロスター」など、欧州では次々と高速鉄道網が整備されました。なかでも仏TGVと独ICEは日本の新幹線と高速性能を競い合い、世界の高速鉄道市場で新幹線のライバルとなっています。
 その後、日本以外のアジアの国や地域にも高速鉄道が広がり、2004年に韓国で仏TGVの技術を導入した「KTX」が、07年には台湾で日本の新幹線車両の供給を受けた「台湾高速鉄道(台湾新幹線)」が開業。中国も日・独・仏・カナダの技術を導入した高速鉄道の営業運転を07年から始めています。
2015年5月18日掲載