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ウクライナの歴史と最新情勢を知る

2015.4.6 掲載
2014年2月の親ロシア政権が崩壊したウクライナ政変をきっかけに、ロシアがウクライナ南部のクリミア半島編入を強行してから1年がたちました。ロシアはさらにウクライナ東部にも介入し東部は政府軍と親ロシア派武装勢力との内戦状態に陥りました。15年2月に双方は停戦で合意しましたが、一部地域でなお衝突が続いており先行きは不透明です。今回は、そもそもウクライナとはどんな地域なのか、危機の歴史的な背景、最近の情勢と今後の展望などを解説します。

1.国内を東西に二分し、親欧米と親ロシアが対立

1.国内を東西に二分し、親欧米と親ロシアが対立
 1991年にソ連から独立したウクライナは、国土面積が日本の約1.6倍の60万3700平方キロメートルで、約4500万人の人口を抱える東欧の大国です。欧州連合(EU)諸国とロシアの間に位置します。
 東部や南部はロシアの勢力下にあった期間が長く、ロシアとは現在も経済的に強く結びついています。一方、かつてオーストリアやポーランドの支配を受けた西部や中部は欧米との関係を重視する傾向があります。文化や産業も東西で異なります。東部や南部はロシア語を話す人が多く、ロシア向けの軍需・宇宙産業や精密機械、鉄鋼業が盛んな工業地帯であり、ウクライナの輸出額の6割を稼いでいます。西部はウクライナ語を話す人が多数を占め、産業の中心は農業で、東部に比べて工業化は遅れています。
 2014年2月から続くウクライナ国内での武力衝突と政情不安、いわゆるウクライナ危機の背景には地域間の政治的志向や民族・宗教の違い、経済格差などがあります。
 経済的な重要性や安全保障の観点から、ロシアと欧米諸国はソ連の崩壊後、ウクライナの政治に関与し続けています。ロシアにとって、ウクライナは歴史、民族の面で結びつきが強く、旧ソ連をともにけん引してきた「兄弟国家」です。クリミア半島は18世紀以降、1954年までロシア領で、現在もロシアの黒海艦隊が駐留する戦略的要衝です。ロシアはEUに対抗するため、旧ソ連のベラルーシやカザフスタンと関税同盟を結んでおり、ウクライナをこの同盟に引きこもうとしています。
 欧州にとっては約4500万人の人口を抱えるウクライナの国内市場は魅力です。ロシアから欧州への天然ガスのパイプラインも通っており、エネルギーの安定供給を確保するため、自陣営に取り込みたいと考えています。米国もロシアの影響力の拡大に神経をとがらせています。

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