05年に国内でハイレゾ音源の配信が始まった当初はクラシックやジャズなどのジャンルが中心で、利用は一部のマニアにとどまっていました。しかし12年ごろから、手軽に楽しめる携帯型対応機器が増えたことなどをきっかけに関連市場が広がっています。これをけん引するのは13年秋にハイレゾ分野へ本格参入したソニーです。携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」を含む18種類の対応機種を一気に投入したのを皮切りに、14年11月にハイレゾ対応のスマホや世界最小・最軽量の新型ウォークマンを発売するなど、製品を拡大中です。同時に系列の音楽配信サイトで、往年の歌謡曲やアニメソング、最新のJ-POPなどのハイレゾ音源を拡充することで新たな顧客層の掘り起こしに成功。同社のオーディオ事業の国内売上高に占めるハイレゾ対応機器の割合は急拡大しており、14年10月~15年3月期には3割に高める方針です。
ソニーの好調を受け、他のメーカーのハイレゾ分野への参入が活発化しています。パナソニックは14年に4年ぶりに復活させた高級オーディオブランド「テクニクス」の中核に対応機器を据えています。税別158万円のアンプや同84万円のプレーヤーなど高価格帯の製品をそろえ、家でじっくり音楽を聴きたいシニア層の需要を取り込もうとしています。JVCケンウッドが木質素材を使ったハイレゾ対応イヤホンの最上位モデルを発売するなど、周辺機器も相次いでいます。同社は世界初のハイレゾ対応カーナビシステムも発売し、自動車分野への裾野拡大をめざしています。
家電量販店もハイレゾ対応のオーディオ機器の販売を強化しています。ビックカメラは対応する携帯音楽プレーヤーやヘッドホン、コンポなどの品ぞろえを大幅に拡充。音楽ジャンル別の試聴機を旗艦店の有楽町店(東京・千代田)とビックロ(同・新宿)に設置し、順次他店に拡大しています。ヨドバシカメラも東京・秋葉原や大阪市の基幹店舗を中心に対応機器のコーナーを設けるなど、売り場のハイレゾ・シフトを進めています。