EUの発足以来、欧州経済は堅調に成長してきましたが、09年に大きな危機に直面します。ユーロ圏加盟国に対する財政不安の連鎖がユーロの急落と金融市場の混乱を招き、実体経済に悪影響を及ぼしました。
この欧州経済危機の発端となったのはギリシャの財政粉飾でした。09年にギリシャで新政権が発足した際、前政権が巨額の財政赤字を隠していたことが発覚しました。ギリシャ国債の元金と利息が支払えなくなる「デフォルト(債務不履行)」に陥るのではないかとの不安が金融市場に広がり、国債の価格が急落(利回りは上昇)。ギリシャ国債を大量に保有していた欧州各国の金融機関は経営が悪化し、欧州全体の金融機能の低下を招きました。ギリシャはユーロ導入国でもあったため、ユーロ相場も下落しました。
EUは危機の拡大を防ぐため、国際通貨基金(IMF)やECBと協力してギリシャ支援の枠組みを構築し、10、12年の2回で計2400億ユーロ(約32兆円)もの金融支援をしました。同時にEUは支援の条件として、公務員の給与削減や人員整理、国有資産の売却など、厳しい財政緊縮策の実施をギリシャに求めました。
ユーロ圏の加盟国であるギリシャは独自の金融政策をとれず、自力での財政再建が難しいため、これを受け入れました。これによりギリシャに対する財政不安は和らぎ、欧州経済危機は沈静化しました。しかし、厳しい緊縮財政をきっかけに、ギリシャは深刻な不況に陥り、国民の緊縮財政への反発が強まりました。09年から6年連続でマイナス成長が続き、相次ぐ増税により国民の手取り収入は大幅に減っています。失業率は約26%に上り、若年層に限れば50%に達しています。