ビジュアル・ニュース解説

ギリシャ危機再燃~欧州経済の現状を知る

2015.3.2 掲載
欧州がギリシャ問題で再び揺れています。ギリシャは2009年に財政不安が表面化し、厳しい緊縮財政政策の実施を条件に欧州連合(EU)などから10年以降2回にわたり金融支援を受けました。15年1月の総選挙後に発足したギリシャの新政権は緊縮策を見直し、債務の減免などをEUに求めています。ギリシャとEUの対立が続けば財政不安が再燃し、欧州経済全体が危機に陥るおそれがあります。今回はEUの誕生と欧州単一通貨ユーロ導入の背景、ギリシャ発の経済危機の経緯や支援の今後の見通しなどについて解説します。

1.一つの欧州を目指す大実験(1)

1.一つの欧州を目指す大実験(1)
 欧州では2度の世界大戦を引き起こし多くの犠牲者を出した反省から、戦後に一つの欧州をつくろうとの機運が生まれました。これを受けて1967年に「欧州共同体(EC)」が発足し、欧州域内の市場と経済の統合が進められました。93年には政治分野も含む広範な協力関係をつくることを目指しEUが誕生しました。
 欧州統合の一環として実施されたのが、域内の各国が共通の通貨制度を導入する通貨統合でした。各国の独自通貨を廃止し、欧州全体で一つの通貨を使う歴史上類を見ない試みです。98年に域内の金融政策を一元的に担う中央銀行「欧州中央銀行(ECB)」が設立されました。99年に当時EUに加盟していた15カ国のうち、英国、ギリシャ、スウェーデン、デンマークを除く11カ国間の為替相場が固定され、金融取引で使用する単一通貨としてユーロが誕生。2002年にはユーロ紙幣・硬貨の流通が始まりました。
2015年3月2日掲載