ビジュアル・ニュース解説

マグロ完全養殖の現状を知る

2015.1.19 掲載
人工ふ化させたマグロの卵を成魚にまで育てて産卵させる完全養殖。乱獲による資源量の減少でクロマグロの漁獲規制が強まるなか、天然資源への影響が少なく安定供給につながるとして期待され、水産各社などが事業化を急いでいます。今回は水産資源としてのマグロに関する基礎知識や漁獲規制の現状、クロマグロの完全養殖事業の動向などについて解説します。

1.繊細で養殖が難しかったマグロ(1)

1.繊細で養殖が難しかったマグロ(1)
 日本の食卓になじみ深いマグロは分類学上、スズキ目サバ科のマグロ属に属します。よく食べられるのはクロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロの5種類で、広い海域を回遊し世界中に分布します。クロマグロは北半球の熱帯・温帯海域、ミナミマグロは南半球の温帯海域を中心にそれぞれ生息しており、スーパーで刺し身として売られることが多いメバチマグロとキハダマグロは赤道に近い熱帯域に、缶詰などに使われるビンナガマグロは熱帯・温帯の海に広く分布します。
 マグロ類の中で最高級とされるのが「本マグロ」とも呼ばれるクロマグロです。かつては日本の近海や遠洋の漁場でとれる天然物が中心で、高級すし店などでしか食べられず、庶民には高根の花でした。しかし近年、天然のクロマグロの未成魚をいけすで育てて出荷する「蓄養」と呼ばれる養殖が普及し、低価格で販売されるようになったため、スーパーや回転ずし店などにも出回るようになりました。
2015年1月19日掲載