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外国為替相場のしくみと影響について知る

2014.12.15 掲載
安倍政権が経済政策「アベノミクス」の一環で大胆な金融緩和を実施して以降、外国為替市場で円安傾向が顕著です。2014年8月ごろから円安・ドル高が加速し、同年12月には7年ぶりに1ドル=121円台まで下落しました。輸出企業の業績上振れなどの好影響が期待できる一方、内需型企業や中小企業、家計などには負担増となり、日本経済への悪影響を懸念する声もあります。今回は外国為替相場の基本的なしくみ、円安が進行している理由、円安の企業業績や経済への影響などについて解説します。

4.円安は輸出企業には追い風だが……

4.円安は輸出企業には追い風だが……
 円の対ドル相場は1990年代の後半から円安傾向が続きました。日本は当時バブル崩壊後の不況に見舞われ、日銀はゼロ金利政策を導入。米国など海外各国に比べ金利が低い状態が続き、米国への投資を増やすため円を売ってドルを買う動きが加速したためです。
 その後、2008年9月の米大手証券リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとする世界的な金融危機で円高に転じました。金融危機の影響が欧米などに比べて小さいとして円が買われたためです。欧米の中央銀行が相次いで金融緩和政策を実施し、日本との金利差が縮小したことも円高を助長しました。
 12年に第2次安倍政権が発足して以降、状況が再び一変します。13年4月、アベノミクスの一環として、日本銀行が大規模な金融緩和政策を打ち出しました。この結果、円を売ってドルを買う動きが加速し、100円を切っていた円相場は14年10月には110円台まで下落しました。
 円安は自動車や電機などの輸出産業の業績に追い風となります。例えば円相場が1ドル=100円から110円に下落すると、1台1万ドルで輸出した自動車の売上高は円建てで100万円から110万円に増加し、円建ての売上高を押し上げるからです。
 アベノミクスをきっかけとする円安により大手企業の輸出採算は好転しています。トヨタ自動車の14年3月期の連結純利益は6期ぶりに過去最高を更新しました。ニッセイ基礎研究所によると、為替相場が対ドルで10%円安になると、日本の実質国内総生産(GDP)は年0.2%押し上げられます。輸出が増えるだけでなく企業の海外子会社の円建て収益も膨らみ、業績を押し上げるためです。
 一方、円安は電力や石油元売りなどのエネルギー関連、食品や衣料品、日用品メーカーなどの輸入産業や内需型企業にとっては、輸入品の調達コストを増やすため逆風となります。特に円安の影響を吸収できる余力が小さな中小企業には打撃を与えます。調達コストが増加すれば最終製品の価格にその分が反映され、家計も圧迫します。
2014年12月15日掲載