ビジュアル・ニュース解説

ペットビジネスの最新事情を知る

2014.10.20 掲載
いまや市場規模が1兆4000億円を超えるまでに成長したペット関連ビジネス。ペットを家族の一員とする考え方が定着し、一緒に楽しむレジャーや旅行プラン、ペット向けの保険や葬儀など、関連サービスは多様化しています。最近はペットの高齢化が進んでおり、企業はそれに伴う新たな需要を取り込むために商品開発や売り場作りなどを急いでいます。今回はペットビジネス拡大の経緯や関連業界の最新動向などについて解説します。

5. 今後のキーワードは「高齢化」(2)

 日用品各社は人間用の技術を応用したペット用品の販売に注力しています。ライオングループのライオン商事が開発した犬猫用の歯ブラシは、介護現場で使われている商品を参考にして、ペットが嫌がらないように柔らかいスポンジ素材を用い、人間用の歯ブラシで使用する山切りの形状を取り入れました。
 ペットフードメーカー各社は高齢のペット用の製品を拡充。高齢のペットでも食べやすいようにジュレ状にしたり、不足しがちな栄養分を追加したりして、ペットの健康を気遣う飼い主の需要に応えようとしています。
 老いた犬や猫を介護する施設やサービスも登場しています。イオンのペット用品子会社はイオンモール幕張新都心(千葉市)に犬専用の介護施設を開業。獣医師が24時間常駐し、犬の心のケアやプールも付いて月額10万円からサービスを提供しています。
 環境省によると、動物を一時的に預かって面倒を見る保管業の首都圏の1都3県の登録数は13年4月現在、3年前と比べ約1000件増加しました。飼い主の旅行中など短期間預かるサービスが中心ですが、今後は長期間預ける需要も増えるとみられます。
 メーカー側が高齢化に対応する商品開発に力を入れているのに対し、それを販売する小売店などの対応はやや遅れ気味です。ユニ・チャームの全国の主要店の売り場を対象にしたペット商品専門のPOS(販売時点情報管理)分析によれば、7歳以上の高齢犬の飼育数は全体の5割を超えるにもかかわらず、売り場に並ぶ対応商品は2割に届きません。
 進むペットの高齢化で、飼い主は高齢のペットの食事や運動などについて正しい知識を持つことが求められています。これに対応し、飼い主の啓発や販売員の意識向上を促す試みが始まっています。14年10月、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)ジャパンなど5社が「ペット長寿国プロジェクト」を発足。国内の犬や猫の平均寿命を長期的に3歳伸ばすことを目指し、ホームページでペットの食事や運動、定期予防についての情報を提供するとともに、小売店の販売員向けのセミナーも開く計画です。
 人口の減少で国内消費が縮小するなか、大きな潜在需要が期待できるペットの高齢化への取り組みはますます広がりそうです。
2014年10月20日掲載