ビジュアル・ニュース解説

電力会社を消費者が選べる時代に~電力自由化について知る

2014.8.4 掲載
電力小売りを2016年に全面自由化する改正電気事業法が14年6月に成立しました。既存の電力会社10社が独占してきた家庭向け市場を狙って多様な業種が新規参入するとみられ、消費者が価格やサービスを比較して電力会社を選ぶ時代が到来します。今回は日本の電力事業制度の概要と規制緩和の経緯、電力小売り全面自由化の意義と参入を狙う企業の動向、電力システム改革の今後の課題について解説します。

5. 発送電分離が今後の改革の焦点に

 一連の電力システム改革で最も重要なのは第3段階である電力会社の発電部門と送配電部門を分離する「発送電分離」です。送配電事業の公平性を高め、新規参入を促すため、先進国の多くは発送電を分離していますが、日本では電力10社が発電所と送電網を一体運用してきました。これまで新電力の参入が認められても、その販売電力のシェアは数パーセントにとどまっています。新電力が電気を需要家に送るには電力会社の送電網を使わざるを得ませんが、送電網の使用料(託送料)が割高で、事実上の参入障壁となっていたためです。送電網を公平に使えなければ、電力小売りを全面自由化しても競争が生まれにくく、電気料金の抑制効果が限られるおそれがあります。
 計画では電力10社の送配電部門を分社化し、運用に介入できないようにします。ただ、東電は16年4月に送配電部門を分社化することを決めていますが、他の電力会社は経営体制が大きく変わる発送電分離を強く警戒しています。電力会社の抵抗が強いなか、15年の通常国会に政府が関連法案を提出できるかどうか。発送電分離は電力システム改革の実効性を左右するだけにその成否が注目されます。
2014年8月4日掲載