ビジュアル・ニュース解説

電力会社を消費者が選べる時代に~電力自由化について知る

2014.8.4 掲載
電力小売りを2016年に全面自由化する改正電気事業法が14年6月に成立しました。既存の電力会社10社が独占してきた家庭向け市場を狙って多様な業種が新規参入するとみられ、消費者が価格やサービスを比較して電力会社を選ぶ時代が到来します。今回は日本の電力事業制度の概要と規制緩和の経緯、電力小売り全面自由化の意義と参入を狙う企業の動向、電力システム改革の今後の課題について解説します。

4. 震災を契機に電力システムの見直し機運高まる(2)

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 小売り自由化の対象となる一般家庭などの顧客件数は約8400万件で、市場規模は7兆5000億円にも上ります。すでに有望市場を狙う異業種からの参入が相次いでおり、新電力への登録企業数は244社(14年6月11日現在)と、13年3月から3倍に増えました。
 新電力で目立つのは自家発電設備を持つ製紙メーカーやガス事業者、石油元売りなどです。東京ガスは電気とガスのセット販売による割引サービスなどを検討しています。ミサワホームは省エネ設計の住宅と割安な電力供給の組み合わせ販売を予定、ソフトバンクは顧客基盤を活用して通信と電力のセット販売を検討するなど、本業との相乗効果を狙う動きもあります。このほか、電気事業者の料金プランをサイト上で比較できるサービスなど、新たなビジネスも生まれそうです。
 守勢に立つ既存の電力会社も対応を急いでいます。東電は子会社を新電力として登録し、14年10月から全国で企業向けに電力小売りを始めます。2000年に大口需要家向けの電力小売りが自由化されたことで、東電は累計で3万2000件の顧客を失いました。家庭向けが自由化されれば、顧客争奪がさらに激化するのは必至です。このため反転攻勢を狙い、供給地域外に打って出ようというわけです。中部電力も三菱商事から新電力を買収し、東電管内で火力発電所の建設を計画しています。地域の垣根を越えた競争の激化は電気料金を下げる要因となりそうです。
2014年8月4日掲載