11年に安定供給を最優先する日本の電力システムを根底から揺るがす事態が起きます。東日本大震災とそれに伴う東京電力の福島第一原子力発電所の事故です。電力供給が安定せず、計画停電や電力使用制限が実施されるなど社会活動に大きな影響を与えました。これをきっかけに電力10社の地域独占と原発への依存度が高い電力システムを抜本的に見直すべきだとの機運が高まりました。政府は13年4月に「電力システムに関する改革方針」を閣議決定し、電力システムの改革を3段階で進めています。
第1段階は地域間の電力融通です。これまでは地域独占の縦割り運営や電気の周波数の違いなどのため、発電した電力の別の地域への融通は限られており、震災の後も電力に余裕がある地域から東日本地域に電気を送ることはほとんどできませんでした。この反省から、電力10社の営業エリアごとに分断されていた送電網を全国一体で運用する組織を新たにつくり15年4月から業務を始めます。
第2段階として14年6月、電力小売りを全面自由化する改正電気事業法が成立しました。新電力も16年から地域の垣根を越えて家庭や商店などに電気を売れるようになります。これにより既存の電力会社同士はもちろん、新電力も交えた本格的な企業間競争が始まり、価格やサービスを基準に消費者が電力を選ぶ時代が到来します。