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電力会社を消費者が選べる時代に~電力自由化について知る

2014.8.4 掲載
電力小売りを2016年に全面自由化する改正電気事業法が14年6月に成立しました。既存の電力会社10社が独占してきた家庭向け市場を狙って多様な業種が新規参入するとみられ、消費者が価格やサービスを比較して電力会社を選ぶ時代が到来します。今回は日本の電力事業制度の概要と規制緩和の経緯、電力小売り全面自由化の意義と参入を狙う企業の動向、電力システム改革の今後の課題について解説します。

2. 規制緩和でも電力会社の独占構造は揺るがず

2. 規制緩和でも電力会社の独占構造は揺るがず
 欧米では1990年代から電力事業の規制を緩和する機運が高まり、国営電力会社の民営化や電力事業の民間開放が相次ぎました。この流れを受け、日本でも競争原理の導入によって電気料金上昇を抑制するため、電力自由化が段階的に進みました。
 95年に電力10社にしか認められていなかった発電事業への参入が自由化され、電力会社に電力を売る「電力の卸売り」が解禁されました。電力の小売りも特定地点に限定してできるようになりました。
 2000年には大型工場や商業施設など、使用する電力の上限(契約電力)が2000キロワット以上の大口需要家向けの小売りが自由化され、「特定規模電気事業者(PPS)」として経済産業省に届け出・登録すれば参入に道が開けました。PPSは「新電力」とも呼ばれます。04年に契約電力が500キロワット以上の中規模需要家向け、05年には同50キロワット以上の小規模需要家向け小売りがそれぞれ開放されました。
 しかし、電力量全体の4割を占める家庭や小規模商店向けの小口の小売りは自由化されず、引き続き電力10社の独占状態が続きました。また、欧米では同時に送電網の開放が進みましたが、日本では電力会社が独占したままでした。
2014年8月4日掲載