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高齢化と税制改正で注目される相続の基本と最新事情を知る

2014.6.16 掲載
人が亡くなったときに、その配偶者や子、兄弟姉妹らが遺産を受け継ぐ相続。高齢化の進行の影響もあり、相続手続きは以前より複雑になっています。また、相続税の課税対象が2015年から拡大され、課税への備えが必要な人の増加も見込まれています。今回は相続が法律上でどのように定められ、どういった場合に税金がかかるのか、注目されている背景、相続税制の改正内容などについて解説します。

3. 一定額以上の財産には相続税がかかる

 相続では法的な手続きのほか、相続税の申告・納付が必要な場合もあります。税金を納めるのは財産を受け継いだ人です。相続を知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10カ月以内に税務署に相続税の申告書を提出し、納付しなければなりません。期限内に申告・納付しないと、加算税や延滞税がかかることがあるので早めに納付する必要があります。
 親族が遠方にいると、10カ月の間に相続の話し合いを何度もするのは簡単ではありません。故人の葬儀もあるほか、葬儀の後すぐに相続の話を切り出しづらいと考える人は少なくありません。10カ月は意外に短いと心得て、節税対策などの必要な措置は早めに講じる必要があります。
 相続税の対象となる財産は、現金や預金、株式などの有価証券、土地・家屋などのほか、特許権や著作権といった金銭で見積もることができる経済的価値のあるすべてを含みます。財産額が一定の金額以下であれば相続税の申告は不要で、税金もかかりません。この金額を「基礎控除」といいます。現在は「5000万円+法定相続人1人当たり1000万円」が基礎控除額です。例えば、夫婦と子ども2人の家庭で父親が亡くなった場合、「5000万円+1000万円×3人=8000万円」が基礎控除額となり、相続する財産額がこの金額以下なら相続税はかかりません。
 亡くなる前にあらかじめ対策を講じることで、相続税額を減らしたり、税金を払わなくて済むようにすることもできます。代表的な方法のひとつが相続する財産を減らす「生前贈与」です。無償で金銭や物品を与えることを贈与といい、与える側が生きている間に親族や他人に贈与することを生前贈与と呼びます。贈与した場合、受け取る側は贈与税を支払う必要がありますが、現行では1年間に110万円までは非課税です。この仕組みを利用すれば、時間をかけて財産を子や孫に移すことで相続財産を減らせます。財産が多く、多額の相続税がかかりそうなときは、贈与税を支払って贈与しても、相続税が減ることで税金の総額を抑えられる場合もあります。相続税対策では生前贈与を上手に活用することが有効です。
2014年6月16日掲載