炭素繊維の需要は世界で伸び続けており、2020年までに現在の2倍強に拡大すると予測されています。
近年、注目されているのは航空機向けです。機体に炭素繊維を使用すれば軽量化が図れ、燃費を大幅に改善できます。これまで尾翼など一部への採用にとどまっていましたが、11年に就航した米ボーイングの「787型」で初めて本格採用され、胴体や主翼など機体の50%に炭素繊維複合材が使われています。欧州エアバスの大型旅客機「A380」でも構造材の25%に取り入れられ、同社の次世代中型機でさらに採用拡大が見込まれるなど、航空機向け需要は順調に増える見通しです。
世界で再生可能エネルギーの導入機運が高まる中で、風力発電機向けの引き合いも増えています。風力発電機の羽根に強度が高い炭素繊維を使えば、より大型化でき発電効率がアップします。
社会インフラの補強材としても期待されています。高度経済成長期に整備された橋脚やトンネルの老朽化が問題となっていますが、炭素繊維のシートを構造物に張り付けることで、建て替えずに耐久性を高める技術が開発されています。
中長期的に、需要が飛躍的に増大する可能性を秘めているのが自動車向けです。燃費規制が厳しい先進国では、電気自動車(EV)などのエコカーに需要がシフトしつつあるからです。鉄製の重たい骨格やボディーを炭素繊維複合材に置き換えれば、車体を大幅に軽量化でき、燃費性能の向上につながります。