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「ベア」「定期昇給」って何?~企業の賃上げの仕組みを知る

2014.4.7 掲載
大手企業で社員の賃上げが相次いでいます。円安を追い風に、輸出企業を中心に業績が改善していることなどが背景にあります。賃上げで経済の好循環を実現しようとする安倍政権の産業界への要請も影響しています。今回は賃上げの定義や仕組み、これまで賃上げが抑えられてきた経緯、今春の賃上げ動向などについて解説します。

1. 企業の負担が重くなるベア

1. 企業の負担が重くなるベア
 企業に勤める正社員の収入は基本給や残業代など「月例賃金」と、夏と冬に支給されるボーナスなどの「一時金」からなります。
 多くの企業には労働者が組織する労働組合(労組)があり、賃金水準や休暇の取り方などの働く条件を良くするため経営側と交渉します。日本では毎年2月から3月ごろにかけて、様々な企業の労組が産業別に協力して経営側と賃上げや一時金の積み増し交渉(春季労使交渉)をします。自動車や電機など輸出関連の製造業の労組などで構成する金属労協が賃上げ水準を決めるリード役となり、金属労協の妥結水準を基に、鉄道や通信など内需型産業の賃金水準が決まります。公務員の給与は民間企業の賃金動向を踏まえて決まります。
 月例賃金の上げ方は2通りあります。一つが各人の年齢や勤続年数に応じて毎月の給与を増やす「定期昇給(定昇)」。もう一つは定昇のベースとなる基本給全体の水準を底上げする「ベースアップ(ベア)」です。例えば、年齢が1歳上がるごとに基本給が1万円上がる定昇を実施している会社の場合、基本給が30歳で月30万円なら31歳になると月31万円となります。その会社が1%のベアを実施すると、30歳の基本給はこれまでより1%多い30万3000円となり、31歳になると31万3100円に上がります。
 定昇は社員数や世代構成が同じなら、企業の人件費負担は大きく変わらないのに対し、ベアは企業の人件費総額を増やすため企業の負担が重くなります。
2014年4月7日掲載