すでに物価は上昇傾向にあり、消費者物価指数は14年2月まで9カ月連続で上がっています。4月からは消費税率が5%から8%に上がりました。賃金の上昇を上回るペースで物価が上がれば消費は冷え込み、景気が悪化する恐れがあります。
今春の労使交渉でベアに踏み切ったのは一部の企業です。大手企業の間でも、自動車メーカーのスズキが一律のベアをせず、電機メーカーのシャープの労組はベア要求を見送るなど、対応に温度差があります。今回の賃上げ機運が一過性のもので終わるか、今後も中長期的に続くかどうかは企業の収益力にかかっています。政府には経済界に賃上げを要請するだけでなく、企業の活力を引き出す規制緩和や法人税率の引き下げなどの成長戦略が求められています。
また、国全体の賃金水準が今後どのように推移するかは雇用形態にも左右されます。既に述べたように、賃金水準の低下傾向が続いたのは非正規雇用が増えたことも大きな要因の一つです。最近はパートや派遣社員などの非正規社員にも賃上げの波が広がり始めていますが、相対的に給与水準が低いパートや派遣社員などの割合が今後も上昇し続ければ、国全体の賃金水準は改善しません。
企業業績の回復と賃上げの機運はいつまで続くのか、中堅・中小企業やパートや契約社員を含む賃金水準がどう変化するのかが今後の注目点です。