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「ベア」「定期昇給」って何?~企業の賃上げの仕組みを知る

2014.4.7 掲載
大手企業で社員の賃上げが相次いでいます。円安を追い風に、輸出企業を中心に業績が改善していることなどが背景にあります。賃上げで経済の好循環を実現しようとする安倍政権の産業界への要請も影響しています。今回は賃上げの定義や仕組み、これまで賃上げが抑えられてきた経緯、今春の賃上げ動向などについて解説します。

2. 低迷が長く続いた賃金水準

2. 低迷が長く続いた賃金水準
 賃金は1995年ごろまで順調に上がっていました。しかし物価下落と経済活動縮小の悪循環が続く「デフレスパイラル」の状態となった90年代の後半から下降線を描くようになりました。企業が賃金コスト削減のため、ボーナスの減額によって賃金を引き下げたり、派遣社員やパートなど非正規社員の採用を増やしたりしたためです。ベアもほぼゼロの状態が10年以上続きました。2002年にトヨタ自動車が高コスト体質の是正のためにベアをゼロとしたトヨタショックが起き、他の企業もこれに追随したのです。この頃から本格的なリストラに踏み切る企業が増え、労組側がベアより雇用維持を優先して求めたことも影響しました。
 その後、企業は業績が良かった場合は、ベアではなく一時金の引き上げで社員に報いるようになりました。ベアによって基本給全体の水準を上げると、景気が悪くなっても引き下げるのが難しいからです。基本給が上がると、それに連動する残業代や社会保険料も上昇します。これに対し、一時金は業績次第で柔軟に上げ下げすることができ、残業代など他の経費への影響も少なくて済みます。
2014年4月7日掲載