賃金は1995年ごろまで順調に上がっていました。しかし物価下落と経済活動縮小の悪循環が続く「デフレスパイラル」の状態となった90年代の後半から下降線を描くようになりました。企業が賃金コスト削減のため、ボーナスの減額によって賃金を引き下げたり、派遣社員やパートなど非正規社員の採用を増やしたりしたためです。ベアもほぼゼロの状態が10年以上続きました。2002年にトヨタ自動車が高コスト体質の是正のためにベアをゼロとしたトヨタショックが起き、他の企業もこれに追随したのです。この頃から本格的なリストラに踏み切る企業が増え、労組側がベアより雇用維持を優先して求めたことも影響しました。
その後、企業は業績が良かった場合は、ベアではなく一時金の引き上げで社員に報いるようになりました。ベアによって基本給全体の水準を上げると、景気が悪くなっても引き下げるのが難しいからです。基本給が上がると、それに連動する残業代や社会保険料も上昇します。これに対し、一時金は業績次第で柔軟に上げ下げすることができ、残業代など他の経費への影響も少なくて済みます。