一方、北米でのシェールガス輸出事業には多くの日本企業が参画しており、商機が広がっています。
総合商社は早い段階から権益の獲得に動きました。住友商事が09年に米テキサス州のガス田への出資を決めたのを皮切りに、三菱商事、伊藤忠商事、丸紅などが相次いで権益を確保しています。出光興産が北米で石油・ガスの貯蔵・輸送を手がけるカナダ企業に出資するなど、物流網を獲得する動きも本格化しています。
プラントや造船、海運などの業種にも恩恵が広がっています。千代田化工建設は米エンジニアリング大手と提携し、シェールガスプラント市場に参入。日揮は米石油大手のシェブロンがカナダで計画するLNG生産プラントを共同受注しました。日本郵船や商船三井、川崎汽船は20年までにLNG輸送船を大幅に増やす計画で、海運大手3社の投資額は2兆円近くになる見込みです。
またシェールガスの増産により、米国の石化製品の生産コストが大幅に下がり、圧倒的な競争力を持つとみられます。日本の化学業界はこれに対応するため、国内の石化製品プラントの縮小を急いでいます。その一方で、三菱ケミカルホールディングスはアクリル樹脂原料の工場を、クラレは液晶フィルム向け樹脂工場をそれぞれ米国に建設する方針を打ち出すなど、米国生産を拡大する企業もあります。
シェールガスは北米だけでなくアジアや欧州、豪州など世界各地に埋蔵されています。各国のシェールガス生産が本格化すれば、世界のエネルギー事情や産業活動にさらに大きなインパクトを与えるかもしれません。
しかし、現状では多くの課題があります。北米より深い場所に埋蔵されていることが多く、生産コストが膨らむのが最大の問題です。新興国はインフラが未整備のため採掘に使用する水が不足しているほか、欧州では採掘に使う水に含まれる化学物質が土壌や水質を汚染するとの批判もあります。このため、現状では北米以外の大半の国々は探査や試掘の段階にとどまっています。
多くの課題を抱える中、世界のシェールガス開発・生産が今後どこまで広がり、それが日本の企業活動やエネルギー政策にどのような影響を与えるのか注目されます。