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イスラム市場開拓のキーワード「ハラル」って何?

2014.2.17 掲載
イスラム教徒が多い東南アジアから日本を訪れる観光客が急増していることから、日本国内で「ハラル」と呼ばれるイスラム教の戒律に対応する取り組みが広がっています。東南アジアは消費市場としても注目されており、輸出産業もハラルへの対応を進めています。今回はハラルとはどのようなもので、なぜ注目されているのか、日本側の主な対応事例について解説します。

1. 商品がイスラム教の規範を守っていることを示す

1. 商品がイスラム教の規範を守っていることを示す
 ハラルとはアラビア語でイスラム教の教えで許されたモノや行為を表し、主にイスラム教徒が食べられる食べ物を指します。逆に、ハラルでないものは「ノン・ハラル」あるいは「ハラム」と呼ばれます。
 イスラム教の規範「イスラム法」では豚は不浄な生き物で、アルコールは精神を乱すとされ、いずれも口にすることが禁止されています。このため、イスラム教徒は豚肉やお酒はもちろん、豚肉や豚骨などから抽出したエキスやスープ、お酒を使う料理、アルコール成分が含まれる調味料なども避けなければなりません。
 イスラム教徒が食べられる食材もイスラム教の教えにのっとった保管や輸送、加工、調理などが求められます。例えば、食肉はイスラム教徒が解体・処理し、その際に祈りを捧げなければなりません。加工施設を養豚場の近くに設けたり、食材を豚肉と一緒に冷蔵したりすることもできません。イスラム法にのっとって処理された食べ物は「ハラル食品(ハラルフード)」と呼ばれます。
 なお、ハラルの厳格なルールは食品だけでなく、肌に触れる化粧品や医薬品の製造工程についても定められています。
 イスラム教徒はハラル食品しか食べられませんが、加工食品や外食で出される料理がハラルに対応しているかを自分で確かめるのは事実上不可能です。そこで、イスラム諸国ではイスラム法の規範に従っていることを証明する「ハラル認証」制度が定着しています。イスラム関連団体などの専門機関が製造工程や原料にまでさかのぼって厳しく検査し、適合の証として「ハラルマーク」を発行します。食品のパッケージやレストラン店頭にハラルマークが表示されていれば、ハラル認証を取得しているので、イスラム教徒は安心して利用できます。
 ハラル認証に統一された国際基準はありませんが、マレーシアの認証は信頼性が高く、他のイスラム諸国でも有効とされます。イスラム諸国の中でいち早く近代化したマレーシアは政府が主体となって世界に先駆けてハラル認証に取り組み、他のイスラム諸国に比べて厳格な仕組みを構築しています。
2014年2月17日掲載