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イスラム市場開拓のキーワード「ハラル」って何?

2014.2.17 掲載
イスラム教徒が多い東南アジアから日本を訪れる観光客が急増していることから、日本国内で「ハラル」と呼ばれるイスラム教の戒律に対応する取り組みが広がっています。東南アジアは消費市場としても注目されており、輸出産業もハラルへの対応を進めています。今回はハラルとはどのようなもので、なぜ注目されているのか、日本側の主な対応事例について解説します。

2. 東南アジアからの訪日客が急増、ハラル対応を急ぐ観光業界

2. 東南アジアからの訪日客が急増、ハラル対応を急ぐ観光業界
 近年、東南アジアからの来日する観光客が増えています。特にイスラム教徒が大半のインドネシアとマレーシアから訪れる客が急増しており、2013年の両国からの訪日客数はいずれも前年比で38%増えています(法務省が13年1月に発表した出入国管理統計による)。
 東南アジアは経済成長と人口増加が著しく、経済的に余裕がある中間層が急速に育っていることから、日本政府は13年7月から東南アジア5カ国向けの査証(ビザ)の発給要件を緩和。東南アジアと日本を結ぶ格安航空会社(LCC)の路線が増えたことも手伝い、訪日客の増加につながりました。
 東南アジアは消費市場としても存在感が高まっています。このため、輸出産業にとっても東南アジア市場の開拓が重要となっており、ハラルに対応する日本企業が増えています。
 国内では商業施設やレストラン、ホテルなどの観光産業がハラルに対応する例が目立ちます。関西国際空港の旅客ターミナルビル(大阪府泉佐野市)内のロイヤルホールディングスが運営するうどん専門店はハラル認証を受け、13年夏にイスラム教徒向けにメニューを全面刷新しました。いなりずしに使う油揚げはアルコール分を抜いたしょうゆやみりんで味付けし、うどんはダシから変えました。調理器具や食器も日本人向けとは完全に分けています。
 奈良ホテル(奈良市)はイスラム教徒の団体客の予約が入るとハラル認証の子羊の肉を仕入れるなどの対応を取っています。ホテルグランヴィア京都(京都市)のレストランは13年夏に、マレーシア政府などが認めたハラル審査会社から認証を得ており、グループ内のホテルにも認証取得を広げようとしています。
 新横浜ラーメン博物館(横浜市)も13年夏から、豚肉やアルコールを使用しないなど、ハラルに配慮したラーメンの提供を始めています。
 日本に長く住むイスラム教徒や東南アジア・中東からの留学生も増えているため、スーパーなどがハラル食品のコーナーを設けたり、大学が学生食堂でハラル料理を提供したりするなど、観光産業以外でもハラル対応が広がりつつあります。
2014年2月17日掲載