ビジュアル・ニュース解説

日本の農業ビジネスの最新事情を知る

2014.1.20 掲載
働き手の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の拡大といった問題に直面する日本の農業。規制緩和をきっかけに農地経営に乗り出す企業が増え、農業の新たな担い手として存在感が高まっています。安倍政権は環太平洋経済連携協定(TPP)参加を踏まえ、農地の集約やコメの生産調整(減反)廃止などの農業強化策を推進。企業の農業参入を促すとともに、意欲的な農家を後押しすることで国内農業の競争力向上を図っています。今回は日本の農業の現状や規制緩和の経緯、企業の参入動向、安倍政権の農業改革などについて解説します。

1. さまざまな課題を抱える日本の農業

1. さまざまな課題を抱える日本の農業
 日本の農業は現在、さまざまな課題に直面しています。その一つが働き手の高齢化で、2012年の農業就業人口(15歳以上の農家世帯員のうち、調査前の1年間に自営農業のみで働いた人と、農業とそれ以外の仕事の両方をしており自営農業が主の人)の平均年齢は65.8歳に達しています。少子化による後継者不足も深刻で、農業就業人口は減少の一途をたどっています。
 農地も減り続けています。1965年に600万ヘクタールあった農地面積は13年には453万ヘクタールにまで減少しています。1年以上作物を栽培せず再び耕作の見込みがない農地を耕作放棄地といいます。農家の働き手の高齢化と後継者不足を背景に、国内の耕作放棄地はここ10年で15%以上増え、広さは国内の農地全体の約1割、滋賀県の面積に匹敵する約40万ヘクタールにまで拡大しています。この背景にはコメの生産数量を抑える国の減反制度(後述)の影響のほか、宅地転用への期待などから農地を相続しても耕作せずに放置したままにする人が少なくないことがあります。生産効率をあげるには広い農地が必要ですが、地域に耕作放棄地があると農地を広げるための集約にも支障をきたします。
2014年1月20日掲載