ビジュアル・ニュース解説

日本の農業ビジネスの最新事情を知る

2014.1.20 掲載
働き手の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の拡大といった問題に直面する日本の農業。規制緩和をきっかけに農地経営に乗り出す企業が増え、農業の新たな担い手として存在感が高まっています。安倍政権は環太平洋経済連携協定(TPP)参加を踏まえ、農地の集約やコメの生産調整(減反)廃止などの農業強化策を推進。企業の農業参入を促すとともに、意欲的な農家を後押しすることで国内農業の競争力向上を図っています。今回は日本の農業の現状や規制緩和の経緯、企業の参入動向、安倍政権の農業改革などについて解説します。

3. 企業の参入に農家は法人化による生産性の向上で対抗

3. 企業の参入に農家は法人化による生産性の向上で対抗
 規制緩和により農業事業に参入する企業は着実に増えています。改正農地法施行前(03年4月~09年12月)に436だった参入法人数は、同法施行後(09年12月~13年6月)には1261にまで拡大しています。参入企業の業種はさまざまですが、特に多いのが食品関連産業で、外食チェーンや流通業者による自社農場からの食材調達が目立ちます。居酒屋チェーンを展開するワタミは02年に農業生産法人を設立して農業分野に参入。大手流通グループのセブン&アイ・ホールディングスは08年に千葉県に農業生産法人を設立、イオンも09年に茨城県で農地リース方式により農業分野に乗り出しました。
 食の安全に関する消費者の目が厳しくなる中、食品メーカーや流通・外食企業にとって安全で質の高い農産物の安定調達が課題となっています。自ら農業を手がければ行き届いた品質管理ができ、低価格で新鮮な野菜や果物をより早く消費者に届けられます。経営や商品開発のノウハウを農業に持ち込めば、生産性を高め、消費者ニーズに合致した付加価値の高い作物を作ることもできます。
 相次ぐ企業の農業参入に対応し、複数の農家が共同で農業生産法人を設立する例も増えています。農地を集約することで生産性を高められ、資金やノウハウを持ち寄ることで加工や販路などの幅が広がります。大規模化で就職先として魅力が高まれば、後を継ぐ若い人材も集めやすくなります。
 最近では、農業生産法人や大規模農家が農協を介さずに外食チェーンなどと直接取引するケースが目立ちます。農協は農家から農産物を仕入れ、まとめて販売しています。農家は農協を通すことで安定した販路を確保できる利点がある半面、農産物の価格が均一になるため、高値で売りたい農家は不満が残ります。農家自らが販売先を選べば、ニーズにきめ細やかに応えるなどの自助努力で、より高い価格で売ることができます。
2014年1月20日掲載