ビジュアル・ニュース解説

「ヒッグス粒子」理論にノーベル物理学賞~素粒子研究の基礎を知る

2013.12.2 掲載
万物の質量(重さ)の起源とされ、「神の粒子」とも呼ばれる素粒子「ヒッグス粒子」。2012年7月にその存在が実験で確認され、13年のノーベル物理学賞はヒッグス粒子の存在を提唱した英国とベルギーの研究者2人に授与されました。物理学の基礎理論に関わるヒッグス粒子の発見により、宇宙の謎を解き明かす研究が加速しそうです。今回は素粒子の基礎知識やヒッグス粒子の役割、素粒子研究への日本の貢献、研究の今後の焦点などについて解説します。

5. 素粒子研究に大きく貢献してきた日本

5. 素粒子研究に大きく貢献してきた日本
 実はヒッグス粒子の理論には日本人の研究者も大きく貢献しています。ヒッグス粒子のアイデアは、米シカゴ大学の南部陽一郎名誉教授が08年にノーベル物理学賞を受賞した「自発的対称性の破れ」と呼ばれる理論がたたき台になっているのです。ヒッグス、アングレール両氏も南部氏の理論を称える発言をしています。
 ヒッグス粒子の発見では日本の企業や大学も重要な役割を果たしました。CERNがヒッグス粒子の存在を立証した実験に使われた巨大な円形加速器「LHC」には多くの日本企業の技術が使われています。LHCは山手線に匹敵する1周27キロメートルのトンネルに設置。光に近い速さで陽子同士を正面衝突させ、飛び散るさまざまな粒子を検出し、その中に含まれるヒッグス粒子の痕跡を探します。その衝突を実現する超電導電磁石を納入したのは東芝です。古河電気工業は加速器の心臓部となる超電導線材を開発し、新日鉄住金ステンレスは超電導電磁石に使う特殊ステンレス材を納めています。
 LHCによる実験には、東京大学や高エネルギー加速器研究機構など日本の16機関が参加するATLAS(アトラス)と欧米中心のCMSという2グループが取り組んでいます。浜松ホトニクスはヒッグス粒子の検出に使うセンサーを開発し、双方の装置で採用されています。アトラスによる実験には世界から約2900人が参加し、日本から加わった110人も装置の開発から実験、データ解析で活躍しました。
2013年12月2日掲載