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「ヒッグス粒子」理論にノーベル物理学賞~素粒子研究の基礎を知る

2013.12.2 掲載
万物の質量(重さ)の起源とされ、「神の粒子」とも呼ばれる素粒子「ヒッグス粒子」。2012年7月にその存在が実験で確認され、13年のノーベル物理学賞はヒッグス粒子の存在を提唱した英国とベルギーの研究者2人に授与されました。物理学の基礎理論に関わるヒッグス粒子の発見により、宇宙の謎を解き明かす研究が加速しそうです。今回は素粒子の基礎知識やヒッグス粒子の役割、素粒子研究への日本の貢献、研究の今後の焦点などについて解説します。

2. 物質を構成する最小単位「素粒子」

2. 物質を構成する最小単位「素粒子」
 右図で示したように、素粒子は「物質を形作る素粒子」「力を伝える素粒子」「質量を与える素粒子」の3グループの計17種類があり、さまざまな物質は物質を形作る素粒子が組み合わさってできており、これらの間には互いに力が働いています。
物質を形作る素粒子=物質粒子は「レプトン」と「クォーク」に分類されます。レプトンは電子など3つの粒子と、これらに対応する3つの「ニュートリノ」の計6種類があります。原子核をつくる陽子と中性子はクォークからできています。レプトン同様、クォークも6種類あります。
 レプトンやクォークがバラバラに存在するだけでは分子や原子、原子核はできません。物質粒子間でお互いに引き寄せ合ったり反発し合ったりする力が働くことで物質ができています。この粒子間に働く力(相互作用)には「強い力」「電磁気力」「弱い力」「重力」の4種類があり、物質粒子が結びつくにはこれらの力を伝える素粒子が必要です。力を伝える素粒子には、強い力を伝える「グルーオン」、電磁気力を伝える「光子」、弱い力を伝える「W粒子」「Z粒子」があります。
 残った質量を与える素粒子がヒッグス粒子です。性質により3グループに大別される17種類の素粒子と、これらの相互作用によって説明される物質の理論は「標準理論」と呼ばれ、現在の物理学の基本になっています。
2013年12月2日掲載