日本の宇宙開発の事業の拡大に向けて、このほど明るいニュースがありました。13年9月にJAXAが最新鋭ロケット「イプシロン」初号機の打ち上げに成功しました。固体燃料型の小型ロケットで、日本の新型ロケット打ち上げはH2A以来、12年ぶりです。H2Aとともに日本の基幹ロケットと位置づけられ、JAXAが民間企業のIHI子会社と205億円を投じて開発しました。日本の固体燃料ロケットの名前には代々、「カッパ(K)」「ラムダ(L)」「ミュー(M)」とギリシャ文字が使われ、イプシロン(E)には進化(Evolution)や探査(Exploration)などの意味が込められています。
液体燃料ロケットは別々のタンクに入れられた燃料(液体水素など)と酸化剤(液体酸素など)がそれぞれパイプを通して燃焼室の中に送られます。これに対し、固体燃料ロケットは燃料(ブタジエン系の合成ゴムなど)と酸化剤(過塩素酸アンモニウムなど)を均一に混ぜ合わせて固めたものを推進剤として使用します。固体燃料ロケットは一度点火すると止められず、誘導制御が難しいという欠点があります。半面、発射が延期されても液体燃料ロケットのように燃料をいったん抜き取る必要がなく、扱いやすさで勝ります。部品の数が少なく構造がシンプルなため、小型化しやすくコストはあまりかかりません。開発期間も短く、イプシロンの場合は約3年でした。
先代の固体燃料ロケットである「M-5」は世界最高の性能と評価されていました。しかし、打ち上げコストが約75億円と高く、06年に運用中止となりました。そこでイプシロンの開発ではコスト減が徹底されました。その代表例がコンピューターを使った自動点検システムです。機体の各部分に組み込まれた人工知能が技術者に代わって点検しパソコンで管理する「モバイル管制」を世界で初めて採用しました。これによりM-5では100人がかりで1カ月以上かかっていた準備作業が、1週間程度、ほんの数人で済むようになりました。作業の手間と人件費が大幅に抑えたことで、イプシロンの打ち上げ費用は30億円台とM-5のおよそ半分になる見込みです。