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小型ロケット「イプシロン」打ち上げ成功 ~日本の宇宙開発の最新事情

2013.10.21 掲載
日本が新たに開発した小型ロケット「イプシロン」が2013年9月、初めて打ち上げに成功しました。日本のロケット技術の伝統を受け継ぐ固体燃料型の打ち上げは7年ぶりです。政府は宇宙開発の目的を従来の研究開発から実用に転換する方針を打ち出しており、低価格で打ち上げられるイプシロンは欧米やロシアに後れをとる日本の宇宙産業の切り札として期待されています。今回は日本の宇宙開発の経緯や宇宙政策の現状、イプシロン打ち上げ成功の意義などについて解説します。

1. 私たちの暮らしを支える宇宙開発の成果

1. 私たちの暮らしを支える宇宙開発の成果
 宇宙空間の探査と利用に関する各種の事業を総称して「宇宙開発」といいます。具体的には、
①地球以外の天体や宇宙空間を調査するための技術開発と運用(惑星探査機など)
②宇宙空間を利用するための技術開発と運用(気象観測衛星や放送・通信衛星など各種の人工衛星、宇宙ステーションなど)
③上記に関係する設備や人(宇宙飛行士)を宇宙空間に運ぶための技術開発と運用(ロケット、スペースシャトルなど)
――などがあります。
 宇宙開発は天文学などの学術研究の進歩に貢献するだけでなく、その成果はさまざまな形で私たちの暮らしを支えています。例えば、天気予報や台風情報などの気象情報は気象衛星のデータが基になっており、カーナビゲーションシステムなどに利用されている全地球測位システム(GPS)には測位衛星(人や物体の位置を正確に割り出すための人工衛星)が欠かせません。
 ロケットや人工衛星のために生み出された技術が、私たちの身の回りに転用される例も少なくありません。押しても元の形に戻る低反発まくらはロケットの打ち上げ時などに宇宙飛行士が受ける衝撃を和らげるために開発されたものです。スペースシャトルの宇宙服の技術が、足への衝撃が少ないバスケットボールシューズに応用された例もあります。
2013年10月21日掲載