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2020年夏季五輪、東京開催が決定 ~近代五輪の基礎と経済効果を知る

2013.10.7 掲載
2013年9月にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会で、20年の第32回夏季五輪を東京で開くことが決まりました。東京都は直接の経済波及効果を約3兆円と試算しており、日本経済再生の起爆剤として期待されています。その一方で、交通手段や宿泊施設の確保などの課題も多く、将来は採算が取れなくなる過剰なインフラ整備を懸念する声もあります。今回は近代五輪の基礎、東京五輪計画の概要と経済効果、五輪開催に向けての動きと課題などについて解説します。

1. 欧州の貴族の提唱で誕生した近代五輪

1. 欧州の貴族の提唱で誕生した近代五輪
 現在の形のオリンピック競技大会は19世紀末に始まりました。後に「近代オリンピックの父」と呼ばれるフランスのピエール・ド・クーベルタン男爵が、1894年にパリで開かれた国際スポーツ会議の席上で、古代オリンピックにならった近代オリンピックの開催を提案。有志によるIOCが発足し、1896年に古代オリンピック発祥の地ギリシャのアテネで第1回オリンピック競技大会が開催されました。
 IOCの役割や五輪の根本原則などについて規定する「オリンピック憲章」は世界の発展や相互理解、平和共存などを掲げています。こうした近代五輪の基本的な考え方(オリンピズム)を広める一連の活動は「オリンピック運動」と呼ばれます。この運動の一環として夏季と冬季に開かれるのが五輪大会です。IOCは「国内オリンピック委員会(NOC)」「国際競技連盟(IF)」「大会組織委員会(OCOG)」などと協力して大会を主催します。
 IOCは国際機関ではなく、NOCのある国から任命される「IOC委員」で組織されています(定員115人)。IOCの管理と運営全般に責任を負うのが会長、副会長、理事で構成する「IOC理事会」で、最高意思決定機関はIOC委員全員が集まる「IOC総会」です。理事会メンバーの選出、五輪競技種目や開催地の決定など、五輪に関する重要事項はIOC総会で投票により決まります。2013年9月にブエノスアイレスで開かれたIOC総会では次期IOC会長の選挙も実施され、ドイツのトーマス・バッハ氏が第9代会長に選出されました。任期は8年で、20年の東京五輪の時にもIOCのかじ取りを担うことになります。
 ちなみに20年の五輪招致レースではIOC委員の間で「新会長は欧州出身のバッハ氏が有力視されているから、20年の五輪開催は欧州(スペインのマドリード)を外そう」というバランス感覚が働き、これが東京の勝利の一因となったともみられています。9月に開催されたIOC総会では20年五輪の実施競技を決める選挙も行われ、28競技の最後の1枠にレスリングが選ばれました。
2013年10月7日掲載