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2020年夏季五輪、東京開催が決定 ~近代五輪の基礎と経済効果を知る

2013.10.7 掲載
2013年9月にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会で、20年の第32回夏季五輪を東京で開くことが決まりました。東京都は直接の経済波及効果を約3兆円と試算しており、日本経済再生の起爆剤として期待されています。その一方で、交通手段や宿泊施設の確保などの課題も多く、将来は採算が取れなくなる過剰なインフラ整備を懸念する声もあります。今回は近代五輪の基礎、東京五輪計画の概要と経済効果、五輪開催に向けての動きと課題などについて解説します。

5. 交通手段や宿泊施設の確保など課題。過度なインフラ整備に懸念も

 いいことずくめに見える五輪開催ですが、課題も少なくありません。東京五輪はほとんどの競技場を集中して配置し移動しやすくしますが、その半面、観光客らが競技場のあるエリアに集まり、地下鉄をはじめとする短距離交通網は混雑が予想されます。輸送頻度を上げたり、バスなどの代替交通手段を確保したりするなどの対策が欠かせず、交通網をさらに整備する必要があるかもしれません。
 施設の整備はコスト上昇が懸念されます。東日本大震災以降、建設労働者の不足が深刻になっており、人件費の高騰に拍車がかかりそうです。景気回復で資材価格も上昇しています。都は五輪関連施設の総工費を4554億円と見込んでいますが、建設コストはさらに膨らむ可能性があります。
 宿泊施設の確保も問われそうです。景気回復によるビジネス利用の拡大と訪日外国人の増加により、都内のホテルは稼働率が高い状況が続いています。ビジネス需要などが一段と高まれば、大会期間中に空室が確保しにくくなるかもしれません。このほか、真夏の暑さ対策や各種案内板の外国語対応など、問題は山積しています。
 とはいえ、五輪開催があらゆるインフラ整備にお墨付きを与えたわけではありません。前回の東京五輪は大きな経済効果をもたらしましたが、現在は日本経済が成熟しており、インフラも一通り整備されています。五輪開催だけで景気がめざましく拡大すると考えるのは早計でしょう。五輪の開催を終えたら需要が激減し、採算が取れなくなる恐れのある交通網の整備は無駄です。費用対効果を精査したうえで、中長期的に日本経済の成長に貢献するものだけを実施すべきでしょう。五輪開催を優先し、震災復興が後回しになるようなことも避けねばなりません。7年後の開催に向けて、政府には日本全体の成長につながるようなバランスのとれた経済・産業政策が求められます。
2013年10月7日掲載