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「食品ロス」を減らそう!~賞味期限をめぐる企業の動向を知る

2013.9.16 掲載
まだ食べられるのに賞味期限切れで捨てられる「食品ロス」が社会問題となり、賞味期限を見直して食べられる期間を長くする食品メーカーが増えています。食品・流通業界は2013年8月から、食品ロス削減に向けて「3分の1ルール」と呼ばれる商慣行を試験的に見直しました。今回は賞味期限などの食品表示制度の概要や食品ロスの現状、食品・流通業界の問題への対応などについて解説します。

4. まだ食べられるのに捨てられる食品ロスが社会問題に(2)

4. まだ食べられるのに捨てられる食品ロスが社会問題に(2)
 流通段階の食品ロスを生む「3分の1ルール」と呼ばれる商慣行も変わりつつあります。3分の1ルールとは、加工食品を製造日から賞味期限までの期間の3分の1が過ぎる前に小売業者に納品しなければならず、賞味期間が残り3分の1を切るとメーカーに返品するものです。鮮度の高さを求める消費者の要望に応えるため、1990年代に小売り大手が導入し業界に広まったといわれます。たとえば賞味期限が製造日から6カ月の場合、卸業者は製造から2カ月以内に小売業者に製品を届けなければならず、小売業者が販売するのは残る賞味期間が2カ月になるまでです。
 納品できない卸の在庫の大半はメーカーに返品され、残りは廃棄されます。メーカーも期限が切れた在庫と卸業者からの返品のほとんどを廃棄します。小売業者の店頭でも残る賞味期間が3分の1を切ると返品、あるいは廃棄されます。多くの食品が賞味期限を残しながら無駄に捨てられているのが現状です。返品や廃棄にかかる費用はメーカーと卸業者が負担していますが、この費用は流通全体のコストに反映され、最終的には販売価格にも影響します。
 食品ロスを減らし、流通全体の効率化を図るべきだとして、食品・流通業界と経済産業省、農林水産省は2013年8月から半年間、菓子と飲料の小売業者への納入期限を賞味期限の2分の1まで伸ばすことを決めました。これにより賞味期限が6カ月の食品なら、製造から3カ月以内に納入すればいいことになります。延びた分だけ販売機会が増え、卸業者はメーカーに返品する食品の量を減らせます。新ルールによって返品や廃棄の無駄が減れば流通全体のコストが下がり、小売店も販売価格を引き下げる余地が大きくなります。
 この新ルールに参加するのはイトーヨーカ堂、イオンリテール、日本コカ・コーラ、サントリー食品インターナショナル、三菱食品、国分など小売り、メーカー、卸の35社です(作業部会の発表時点)。新ルール導入は試験的ですが、実際に返品や廃棄削減に効果が上がれば、関連業界全体に広がる可能性もあります。
 もちろん、食品ロスの問題は産業界だけでは解決できません。国内の食品ロスの半分は家庭内から出ているからです。過度に食品の鮮度を求めずに賞味期限の近い食品を敬遠しないなど、消費者ひとり一人の行動と意識改革も必要でしょう。メーカー、卸、小売りだけでなく消費者も交えて食品流通や消費のあり方について議論を深めることが求められています。
2013年9月16日掲載