ビジュアル・ニュース解説

「3Dプリンター」で何ができるの? 何が変わるの?

2013.9.2 掲載
印刷するような感覚で複雑な立体物を造形できる「3D(3次元)プリンター」が注目を集めています。技術革新により精度が向上し、使える素材も多様化していることから、製造業のほか、医療や教育、ファッションなどさまざまな分野で活用が期待されています。価格低下をきっかけに、個人の利用も急速に広がっています。今回は3Dプリンターの基本的なしくみと種類、注目されている背景、最新動向、本格普及に向けた課題などについて解説します。

1. 金型を使わずに複雑な立体物が作れる装置(1)

1. 金型を使わずに複雑な立体物が作れる装置(1)
 3Dプリンターは3次元の設計データをもとに、樹脂や金属などの素材から立体物を作製できる装置です。槽の中の液体樹脂に紫外線などの光を当てて固める、粉末状の素材にレーザー光線を当てて固める、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂などを高温で溶かしながら造形する、アクリル系の樹脂を吹き付けて固める(インクジェット式)などの方式がありますが、いずれも「素材の層を積み上げて立体物を造形する」という基本的な仕組みは同じです。ひも状にした粘土を積み重ねて作る縄文式土器を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。3Dプリンターでは素材を0.1ミリ以下の薄い層にして、これを積み重ねることで立体物を作ります。
 3Dプリンターが誕生したのは1990年前後で、主に自動車や電機など製造業で活用されていました。機械製品を作るための部品の多くは金属で作った金型に樹脂などの素材を流し込むことで作られますが、金型の作製には独特のノウハウが必要なうえ、手間と時間がかかります。3Dプリンターを使えば、金型技術を持たない企業でも設計データを入力するだけで部品が簡単につくれます。複雑な形状の部品はいくつもの部品を組み合わせて作り上げるのが一般的ですが、3Dプリンターなら一体成形できます。製品のアイデアをすぐに触れられる形にできるのが魅力で、製品開発のコスト削減や期間の大幅な短縮につながります。他社製品を分解し、解析して情報を得る「リバースエンジニアリング」に利用することもできます。
 ただ、以前はプリンターの精度が低いうえ、使用できる素材がほぼ樹脂に限られていたため、主に試作品の作製や少量の部品の内製に使われてきました。しかし、ここ数年で精度が向上し、使える素材も多様化したため、製造業の製品開発を加速する手段として注目を集めています。
2013年9月2日掲載