無料通話サービスの普及は、既存の通信会社の事業展開にも影響を及ぼしています。たとえばNTTドコモは音声通話の定額制の導入を検討中です。無料通話アプリと同じようにIPで通話する仕組みですが、音声専用のネットワークを確保して、高い通話品質を実現すると見られます。またNTTコミュニケーションズは11年に、月額350円でスマホ向けのIP電話サービスを開始しました。
無料通話アプリやサービスを提供する会社と連携する例もあります。例えばKDDIは2010年から主にパソコン向けに展開している無料通話サービスの「Skyp(スカイプ)」と連携し、スマホ向けの無料通話サービス「Skyp au」を開始しました。SkypのIDを持っている人同士であれば、無料で通話ができる上、KDDIの電話回線を使うことから高品質をうたっています。
一方、無料通話アプリ市場をけん引するLINEは、ユーザーの拡大に合わせてビジネスモデルを大きく変えようとしています。具体的には、無料通話やメールなど機能に加えて、ゲームや電子書籍、音楽などさまざまなコンテンツを有料で提供し、LINEをネット上の「総合プラットホーム(配信基盤)」とすることを目指しています。ただし、こうしたビジネスモデルはグーグルやフェイスブック、ディー・エヌ・エーといった国内外のIT大手が先行しており、今後はこれらとの厳しい競争が待っています。LINEをはじめとする無料通話アプリがスマホ時代の新しいインフラとして定着できるのか――今後の動向から目が離せません。