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「日本版ISA」について知る

2013.6.17 掲載
2014年1月から証券優遇税制が大きく変わり、「日本版ISA」と呼ばれる制度が新設されます。個人の長期投資を促すのが狙いで、株式や投資信託などへの年100万円までの投資で得られる配当や譲渡益が5年間、非課税扱いになります。ただ、その仕組みは複雑で、上手に利用するには制度の内容を十分に理解する必要があります。今回は日本版ISAの仕組みと利用上の注意点、制度の課題などについて解説します。

4. すでに保有している商品はISA口座に入れられない

4. すでに保有している商品はISA口座に入れられない
 こうしたISAの仕組みは長期投資を促すもので、比較的少額の元手でコツコツと投資を始めたい人にとっては有用な制度といえます。ただし、利用に際してはいくつかの注意点もあります。
 まず知っておきたいのは、すでに保有している金融商品はISA口座に入れられないということです。英国のISAでは認められている1回の投資枠内での商品の入れ替えが日本版ではできないため、市況の変化に応じて資産内容を柔軟に見直しにくい欠点もあります。1つの投資枠でA社の株式を買った後、それを売却しB社の株式を買うことはできないのです。
 ISA口座を開く金融機関によって買える商品は異なります。銀行や信用金庫では株式は購入できませんし、扱っている投信の種類や本数、手数料なども金融機関によってまちまちです。ISA口座は1人1つしか持てず、現状ではいったん口座を開設すると、4年間は他の金融機関で口座を開設できません。13年10月から始まる口座開設の受け付けを前に、金融機関の顧客の囲い込み競争はすでに激しくなっていますが、口座を開く前にISAで何を運用するか考えておく必要があります。非課税制度の恩恵を最大限に活用するには、品ぞろえが豊富で手数料が安い金融機関を選ぶのが基本といえるでしょう。
 日本版ISAは恒久的な制度でないため、投資家が安心して利用しづらいとの指摘もあります。英国では時限措置だったISAを恒久化しました。日本の金融庁も個人投資家らの声を反映して制度を改善し、利用が広がれば恒久化を目指す方針です。
 日本版ISAの導入が決まったものの、その存在や内容はまだあまり知られておらず、仕組み自体もわかりやすいとはいえません。この制度を利用しようと考えている投資家の皆さんも当面は、新聞・雑誌などでまめに情報をフォローする必要がありそうです。英国ではシンプルでわかりやすい制度への改善が進んだことで定着しました。日本版ISAが普及するためには国民への周知徹底はもちろん、いかに使いやすい制度に改善していくかがカギとなりそうです。
2013年6月17日掲載