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「ネット選挙」が解禁~ネットと選挙運動について知る

2013.5.20 掲載
今夏の参院選から「ネット選挙」が解禁され、候補者が選挙運動にインターネットを利用できるようになりました。多くの国民が政治に関心を持ち、主体的にかかわるきっかけになることが期待されています。ネット選挙解禁で政党や候補者、私たち有権者は何ができるようになるのか。そして何に注意しなければならないのか。今回は選挙運動の基礎知識、ネット選挙が禁じられていた理由などについて解説します。

2. 選挙運動でのネット利用が原則自由に

2. 選挙運動でのネット利用が原則自由に
 ネットを利用した選挙運動、いわゆる「ネット選挙」についても禁止されてきました。60年余り前につくられた公選法は選挙運動でのネット利用を想定していません。選挙運動で配布できる文書図画ははがきやビラに限定されているため、総務省はこれまでウェブサイトやメールを使った投票の呼びかけはできないとし、選挙期間中に候補者が自身のホームページやブログを更新することも認めていませんでした。
 しかし、ネットは基本的に誰もが無料で利用できるものです。ネットを使った選挙運動を制限することは、選挙運動における資金力の差による有利不利をなくし、公平さを確保するという主旨と矛盾します。また、いまやネットは多くの人が利用する社会インフラとして定着しており、政治家がホームページやブログ、フェイスブックやツイッターなどの交流サイト(SNS)を活用して情報発信するのは当たり前になっています。ネット選挙ができないのはこうした実状にもそぐいません。このためネットの普及が進んだ10年ほど前からネット選挙の解禁を求める声が高まっていました。
 すでに多くの先進諸国ではネット選挙が実現しています。例えば米国では、ほぼ無制限にネットが選挙運動に使われています。2008年と12年の大統領選では、オバマ陣営が遊説会場への動員や資金集めにツイッターやメールを活用したことがよく知られています。お隣の韓国でも12年からネット選挙が本格導入され、大統領選では各陣営がネット選挙担当の専門組織をつくり、候補者の私生活を公開したり、遊説の様子を配信したりしました。ツイッターなどで投票を呼びかけたことで投票率が伸びたともいわれます。
 こうした社会の要請や世界的なネット選挙導入の流れを受け、13年4月に公選法が改正され、日本でもネットを使った選挙運動が解禁されました。13年7月の参院選から適用され、参院選以降は地方選挙でも解禁されます。これにより、政党や候補者はウェブサイトやメールを通じて有権者に政策の中身を伝えたり、投票を求めたりできるようになります。はがきやビラに比べ安くて手軽に有権者に働きかけることができます。
 一般の有権者もウェブサイトで自分が応援する政党や候補者への投票を呼びかけられるようになります。たとえば、支援する候補の街頭演説の様子を自分のブログに載せたり、ユーチューブなどの動画配信サイトに投稿したりして知り合いに投票を呼びかけることが可能になります。SNSを使って候補者と政策について議論することもできそうです。自分の関心のある問題を候補者がどう考えているのかをSNSで直接問いかけられれば、誰に投票するかの判断に役立ちます。
2013年5月20日掲載