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日銀総裁って何をする人? ~その役割と日銀の組織について知る!

2013.3.4 掲載
日本銀行(日銀)の白川方明総裁は2月5日、任期満了を待たずに3月19日に辞任することを表明しました。日銀総裁は内閣が任命しますが、これには国会の同意が必要です。衆参両院で与野党勢力が逆転しているため後任人事の決定は難航する可能性もあります。今回は、日銀の組織の概要と総裁の役割、総裁人事のこれまでの経緯、総裁選びの仕組みなどについて解説します。

4. 次期総裁は財務省OB?

4. 次期総裁は財務省OB?
 2012年12月の衆院選で自民党が圧勝して安倍政権が発足しました。安倍首相は、長引くデフレからの脱却を図る狙いから、インフレターゲット(物価目標)を設定した上で無制限の金融緩和の実施を日銀に要求。さらに、日銀の独立性を見直す日銀法改正の可能性にも言及するなど、金融政策に対する政府の関与を強める姿勢を鮮明にしています。安倍首相の強い意向を受け、日銀は13年1月22日、2%の物価上昇率を目標とする政府との共同声明を発表。合わせて同日の金融政策決定会合で、無期限で国債などの資産を買い入れるという新たな金融緩和の導入も決めました。
 こうした中で2月5日、白川方明総裁が4月8日の任期満了を待たず、副総裁2名の任期が満了する3月19日に辞任すると表明しました。前倒しで辞職することで、安倍政権との協調姿勢を打ち出すとともに、新体制への移行を速やかに進める狙いと見られます。政府は後任人事について、正副総裁が退任する3月19日までに間に合うよう国会の同意を得る方針です。
 政府の日銀への関与が強かった時代の総裁人事では、財務省(旧・大蔵省)と日銀の出身者が交互に総裁を務める、いわゆる「タスキがけ人事」が続きました。98年の新日銀法の施行後は、白川氏まで3代続けて日銀OBが就いています。
 今回の次期総裁候補には財務省OBの名も挙がっていますが、野党の一部は財務省OBが就くことに強く反対しています。任命には衆参両院の同意が必要で、参院で与党が過半数割れをしているため、政府・与党が推す人材にすんなり決まるとは限りません。2008年に実施された前回の総裁人事では、政府や自民党など当時の与党は財務省OBや元大蔵次官を総裁候補に推しましたが、野党・民主党が過半数を占める参院が否認。任期満了後も後任が決まらず一時的に日銀総裁が不在となりました。日銀総裁人事を政争の具にすることで金融政策に空白が生じるような事態だけは避けたいところです。
2013年3月4日掲載