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「投資信託」について知る!

2012.12.17 掲載
多数の投資家からお金を集め、一つにまとめてプロが運用する仕組みの「投資信託」。初心者でも少額で分散投資ができ、低金利時代の資産運用の有効な手段として人気を集めています。最近は取扱金融機関どうしの競争が激しさを増しており、手数料を抑えたり、これまで少なかった長期運用の商品を拡充するなど、各社は投資家からの資金取り込みに知恵を絞っています。今回は投資信託の基礎知識、最近の商品の傾向などについて解説します。

4. 「毎月分配型」には落とし穴も

 投信の中には運用益を主な原資として、保有者に定期的に「分配金」を支払うものもあります。支給額は投信ごとに異なり、支給頻度も年1回、年2回、3カ月ごとなどさまざまですが、近年、特に個人投資家の人気を集めているのが「毎月分配型」です。純資産残高は2011年末時点で31兆円を超え、株式投信全体の約7割を占めます。人気の火付け役となったのは1997年末に運用が始まった「グローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)」です。比較的金利の高い主要先進国の債券を中心に運用されるため、国内の預貯金よりも高利回りが期待でき、定期的に現金収入が得られることから、年金生活をする高齢者を中心に利用が増えました。
 ただし、分配型の投信を購入する際には注意が必要です。じつは分配金は必ずしも積み上げてきた運用益からではなく、元本を取り崩して支払われることがあります。そのため、運用成績が悪ければその分だけ基準価格は減少し、運用の原資が目減りしてしまいます。最近は欧州債務危機や円高などの影響で多くの毎月分配型の運用成績が悪化し、元本の取り崩しにより分配金を支払うケースが増えています。こうした事態を問題視した金融庁は、分配金の原資を「運用益」に限定するような規制を検討しています。なお分配金は、運用益が原資なら「普通分配金」、元本払い戻しなら「特別分配金」と区分されます。購入者は、受け取った分配金がどちらなのか、取引残高報告書などでしっかり確認することが大切です。
 最近は老後に向けた資金づくりを意識する若い世代を取り込もうと、分配金の支払額の引き下げや支払い頻度を絞り込んだ新商品の投入が相次いでいます。分配金の支払額・頻度を抑えれば、再投資に充てる資金が増えて複利効果が高まるため、長期運用に有利となります。
 毎月分配型に限らず、投信はあくまで「投資」であり、元本が保証された預金などとは性質が大きく異なります。購入者側としては「高利回り」「高分配」などの売り文句だけを鵜呑みにせず、その仕組みとリスクをしっかりと理解した上で上手に利用したいものです。
2012年12月17日掲載