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街中の水族館が増えているのはなぜ? ~水族館の最新動向について知る!

2012.11.19 掲載
地方の海沿いにあるのが一般的だった水族館ですが、近年は内陸の都市部での開業が増えています。2012年3月には京都駅近くに「京都水族館」が、5月には東京都墨田区の東京スカイツリーに隣接する商業施設内に「すみだ水族館」がオープンしました。いずれも海の水を一切使わず人工海水だけを用いる国内初の試みです。今回は水族館の役割や歴史、経営形態、都市部での開業が増えている背景などについて解説します。

2. 「うおのぞき」に始まる日本の水族館

 水族館の歴史を簡単に振り返ってみましょう。水族館は英語で「アクアリウム」といいます。アクアリウムは水族館だけでなく、個人が鑑賞用に熱帯魚などを飼う水槽なども含め、水生動物を人工環境で飼育する設備全般を指す概念です。魚を飼育する歴史は古く、紀元前25世紀に古代シュメール人が淡水魚を池で飼育していたことが知られますし、中国では紀元後の宋代(960~1279年)の頃に鑑賞用の金魚の養殖が始まったとされます。
 近代的な水族館は産業革命の進展と共にヨーロッパで発展しました。「世界初の水族館」には諸説あり、1830年に開設されたフランスのボルドー水族館、1853年に英ロンドン動物園内に開設されたフィッシュ・ハウスなどとする説があります。いずれも水を貯めた水槽を複数並べただけのシンプルなものでしたが、1860年に水槽内の水を循環して浄化する飼育装置が考案されたのをきっかけに、本格的な水族館が欧米各地で作られるようになりました。
 日本の水族館の始まりとされるのは、1882年に開園した上野動物園内にあった小さなアクアリウム施設です。当時は「水族館」という言葉がまだなかったため、この施設は「観魚室」と書いて「うを(=うお)のぞき」と読ませていました。本格的な水族館が各地に作られるようになったのは戦後のことです。経済成長と共に何度かの建設ブームがありましたが、直近のブームは1990年代から2000年代初頭にかけてで、大型水族館の開設が相次ぎました。
 なお先述の通り、日本の水族館の多くでは娯楽性が追求されています。欧州の場合、大航海時代(15~17世紀)を経て植民地支配が始まり、世界中からさまざまな文物が流入しこれらを収集・研究・展示する施設として博物館が作られました。水族館はこうした流れの中で「水生生物の博物館」として発祥した経緯があります。一方、日本では江戸時代に鎖国をしていたため文物の流入が少なく、水族館も欧州のような博物館としての歴史を持ちません。海外と違って娯楽的施設の要素が強いのは、こうした歴史的背景も関係しています。
2012年11月19日掲載