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ドクター・カッパー

2023.5.31(水) 掲載
経済の変調いち早く「診断」
 銅は幅広い産業で使われるため、需要動向が世界の経済状態を映し出しやすい。その価格は景気の回復局面では上昇し、景気の下降局面では下落する傾向が強い。あらゆる経済活動の成果を集約する必要があることから四半期に1度の頻度でしか公表しない国内総生産(GDP)などの経済指標と比べて、価格動向から世界経済の変調をいち早く診断できるため「ドクター」の異名を持つ。
 銅価格の国際指標となるロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物価格は、過去にも世界経済の変化に敏感に反応してきた。1997年のアジア通貨危機時や2008年のリーマン・ショック、20年の新型コロナウイルス感染拡大時といった世界的な経済ショック時には、銅の価格は経済指標に先んじて急落した。
 最近では脱炭素社会の実現に不可欠な金属の一つとしても注目が集まる。脱炭素化に伴い電気自動車(EV)や風力発電など再生可能エネルギーの普及が進むと、EVや再エネ発電設備の内部配線などに使う銅需要が大きく増えるとみられているためだ。銅価格は現時点では景気との関わりで需要が増減する傾向が強いものの、長期的には景気循環と連動しにくい脱炭素の需要が高まり、価格が高止まりしやすくなるとの見立てもある。