きょうのことばセレクション

価格転嫁

2023.3.1(水) 掲載
 原材料価格が上昇する中で売値が据え置かれたり、値引きされたりすれば、企業はコスト削減のため人件費を切り詰める。働く人の賃金が増えず、消費にお金がまわらず、経済全体が停滞しかねない。商流の川上、川中などでの企業間の取引価格から消費者への販売価格まで、段階ごとに転嫁を進める必要がある。
 内閣府のまとめによると、米国は昨年10月時点で川上の価格が前年同月比9%上がる一方、消費など最終需要も8%上がり、スムーズな価格転嫁が進んでいる。日本は川上が38%上がる中、最終需要は5%しか上がっていない。帝国データバンクが昨年12月に実施した調査でも「全く転嫁できてない」と答えた企業が16%あった。
 長引くデフレで日本の消費者は価格据え置きに慣れている。企業側には価格を上げれば売り上げが減るとの懸念が根強い。コスト増の局面で小売店や大手メーカーが価格を据え置こうとした場合、立場の弱い下請け企業にしわ寄せが行きがちな構図がある。個別企業の取引にどこまで政府が踏み込めるかは難しいものの、社名公表などの試行錯誤が続いている。
価格転嫁