きょうのことばセレクション

AI倫理

2021.1.1(金) 掲載
 人工知能(AI)が人類に悪影響を与えないようにするための規範を指す。学習データの偏りから不当な差別につながったり、国家による監視に使われたりするのを防ぐ。AIの代表格であるディープラーニング(深層学習)は判断の過程が不透明で、使う側が気づかぬうちに問題を起こす懸念が高まっている。米グーグルや米マイクロソフトなどIT(情報技術)企業が相次ぎ指針を公開してきた。
 1942年にはSF作家のアイザック・アシモフ氏がロボットが従うべき原則として小説で「ロボット工学三原則」を提示した。当時はSFでの議論にとどまっていたが、近年はAIの発達により現実味を増している。12年にトロント大学の研究者が深層学習の精度を実証してから「第3次AIブーム」が花開き、画像認識などで人間の能力を超えるAIが実現した。自動運転など生死を左右する領域にもAIが使われており、重要性が増している。
 企業だけでなく国家や国際機関も対応に乗り出している。日本政府は18年にAIを使う際の7原則を策定し、「人間中心」を掲げた。欧州連合(EU)の欧州委員会も同様にAI倫理指針を公表し「人間中心」を打ち出した。「機械にどこまで決定させるのか」「禁止すべき領域はあるか」といった観点もあり、科学技術の倫理を総合的に取り扱う国連教育科学文化機関(ユネスコ)が国際ルールづくりを進めている。
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