きょうのことばセレクション

トリチウム

2020.11.1(日) 掲載
 水素原子の重さが異なる同位体の一つで、「三重水素」とも呼ばれる。放射線の一種のベータ線を出す。トリチウムは宇宙から飛んでくる放射線などにより自然界でも作られるため、大気中の水蒸気や雨水、水道水などにわずかに存在する。自然界に最も多い普通の水素(軽水素)は陽子1個と電子1個でできているが、トリチウムは中性子2個が加わっている。
 水の中では、水分子(H2O)の2個の水素原子のうち1個がトリチウムに置き換わった「トリチウム水」として存在する。普通の水と性質が似ており、現在の技術では水から十分取り除くことは難しい。トリチウムのベータ線は紙1枚で遮断できる。被曝(ひばく)しても大量に摂取しない限り人体への影響はまずないとされる。
 東京電力福島第1原子力発電所で生じる汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化しても、トリチウムを含む水が大量に残る。東電の試算では、保管する処理水に含まれるトリチウムは860兆ベクレル。1リットルあたり約73万ベクレル含むが、500~600倍に薄め、基準値の40分の1程度の1リットルあたり1500ベクレル未満にして海洋に放出する計画だ。
トリチウム