きょうのことばセレクション

政策保有株

2019.10.1(火) 掲載
企業が純粋な投資ではなく、取引先との関係維持や買収防衛といった経営戦略上の目的で保有している株式。1960年代ごろから広まった日本特有の仕組みで、株式を相互に保有しあう「株式持ち合い」の形が多い。片方の企業だけが保有する場合もある。資産の有効活用を妨げるほか、「モノいわぬ株主」が存在することで企業統治(コーポレートガバナンス)の形骸化を招く弊害もあり、海外投資家を中心に批判を浴びてきた。
 戦後に旧財閥系の企業グループが結束を高めようと始めたとされ、グループの中核だった銀行を中心に持ち合いが加速した。90年ごろには上場株式の時価総額に占める比率が3割を超えた。解消が進むきっかけになったのがバブル経済の崩壊だ。保有株の下落で損失が膨らみ、金融機関を中心に保有株を手放す動きが広がった。2002年には銀行から政策保有株を買い取る「銀行等保有株式取得機構」が政府主導で設立され、市場への影響を抑えながら政策保有株を減らす役割を担っている。
 政府が15年から成長戦略の一環として企業統治の改善や資本効率の向上を企業に要請したことで、解消は一段と進んできた。野村資本市場研究所によると政策保有株の比率は足元で約1割に下がった。東京証券取引所が導入した企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)は政策保有の狙いや合理性の説明を義務付けた。金融庁も19年3月期の有価証券報告書から保有する銘柄の個別開示を厳格化した。
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