きょうのことばセレクション

退位

2019.5.1(水) 掲載
天皇の退位は天皇の終身在位を定めた明治以降で初めてで、1817年の光格天皇以来約200年ぶりとなる。皇室典範は「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」と定め、天皇退位による皇位継承の規定はない。政府は2017年6月に天皇の退位を実現する特例法を成立させ、一代に限って退位を認めることにした。同年12月の皇室会議で退位の期日を19年4月末と決めた。
 きっかけは16年8月の天皇陛下の「お言葉」だ。高齢で公務を果たすのが難しくなったことなどを理由に退位の意向を示唆され、政府が検討を始めた。特例法では退位した天皇、皇后をそれぞれ「上皇」「上皇后」と呼称し、皇位継承順位1位となる秋篠宮さまの処遇を「皇太子」と同等にすることなどを定めた。
 天皇を退位した上皇、上皇后は公務から退くが、具体的な活動についての規定はない。二重権威の問題が生じないよう原則、私的な活動に限るとみられる。政府は今回の退位は「将来の先例となり得る」とする。制度として恒久化することには慎重だ。恣意的・強制的な退位が可能となり、天皇の政治関与を禁じる憲法4条に抵触するおそれがあるためだ。
退位