きょうのことばセレクション

脊髄損傷

2019.3.1(金) 掲載
背骨の中心部を通る太い神経組織が脊髄で、脳からの指令を手足に伝える神経が集まる。交通事故などで脊髄を損傷し、重い傷を負うと、指令が伝わらなくなり、手足に重いまひなどの障害が残る。無意識に動く筋肉が働きにくくなり、排便や排尿で苦労する。自律神経の働きが弱まり、血圧や体温の調整も難しくなる。
 国内で毎年5千人が新たに患者となり、のべ10万人以上いるとされる。原因は交通事故や転落のほか、スノーボードやラグビー、柔道などのスポーツによる外傷などだ。全国の労災病院など30の医療機関が調べた「全国脊髄損傷データベース」によると、他の病気に比べて30歳以下の若い世代が目立つ。近年は高齢者が自宅の中で転倒して損傷するケースも多い。
 失った脊髄の機能を取り戻す治療の取り組みも進んでいる。札幌医科大学とニプロが開発した細胞製剤が2018年12月に国に承認された。患者の骨髄液に含まれる幹細胞という細胞を使い、点滴で細胞を大量に入れると、脊髄の損傷部に自然に集まり神経の働きの回復を促すという。米国では、iPSと並ぶ万能細胞の胚性幹細胞(ES細胞)を使う治験が進んでおり、バイオベンチャーのアステリアス・バイオセラピューティクス(カリフォルニア州)が25人の患者で移植を実施した。
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