きょうのことばセレクション

保護主義

2017.6.1(木) 掲載
 過度に関税を引き上げたり、為替を切り下げたりして自国産業を守ろうとすること。国同士が対抗措置を打ち合うと世界に保護主義的な動きがまん延する恐れがある。1920年代には世界的な恐慌から主要国の間に保護主義が広がり、苦境に陥った国々の経済縮小が世界大戦を招いたとされる。
 その反省から、当時のハル米国務長官を中心としたグループが現在の世界貿易機関(WTO)につながる自由貿易体制の構想を検討。自由貿易は「高い関税、貿易障壁、不公正な経済競争が戦争を導く」(ハル氏)という考えが根底にある。ただ障壁を減らすのは簡単でなく、WTOの自由化交渉も挫折の連続だった。
 米トランプ政権は機能不全と映るWTOへの反発を強め、2国間で貿易・通商問題の解決に乗り出す構えをみせる。中国による鉄鋼の不当廉売など「不公正な貿易」を問題視するのはそのひとつだ。環太平洋経済連携協定(TPP)からあっさり離脱したが、米国の利益のみを追求すれば多国間の国際協調の枠組みが壊れかねない。
保護主義